「田島、金儲けの極意を教えてやるよ。たとえばここに一万円あるとするだろ。百円のインスタントラーメンを買えば、残りは九千九百円だ。そうなると後は速い。まず半端の九百円がなくなって、次に千円札が一枚二枚と消えていく。あっという間に使い切ってしまう。これはわかるよな」
私は頷いた。実感として分かることだった。
「金を増やすにはこの逆をすればいい。一万円をまず一万百円にする。これは難しいことじゃない。次は一万百円を一万二百円にする。これも難しくない。この難しくないことを繰り返していけば、簡単に一万円は二万円になる。大抵の人間は馬鹿だから、いきなり一万円を倍にしようとする。だからしくじる」
ー『殺人の門』東野圭吾著 角川文庫 p511より引用 ー
主人公の田島が倉持修という詐欺師(?)に幼少の頃より、
繰り返し騙され、利用されていく。
田島は、「倉持を殺そう」と騙されるたびに
思うのだが、なかなか踏み切れない……。
ラストも救いがなく、かなり読後感のわるい本(笑)。
引用部分は、倉持が田島に説教しているところ。
詐欺師の言葉とは思えないほど、堅実で含蓄がある。
東野圭吾というひとは、お金を稼ぐ、ということが
どういうことなのか、分かってるんだなあ、と思わされます。
あまりに味わい深い言葉なので、シェアしてみました。笑